
次世代デジタル化
文化財のデジタル化で、大乗寺の場合は、画像のみのデータをスキャニングの精度を1000dpiまで精度を上げて保存しているに過ぎず、実際1000dpiのデータをどう生かすかが手つかずのままです。世のデジタル化の流れは、機器の向上につれて意味も無く精度を上げていくだけのように思えます。最近、京都大学国際融合創造センターの井手亜里教授よりデジタル化に関してご教示いただく機会がありました。先生の目指すデジタル化は、スキャナーで直接文化財をデジタル化する時に、画像データを取り込むと同時に、顔料やバインダー等の組成分析をしてそのデータも同時に記録できるスキャナーの開発をしようとするものです。これにより、文化財に使用されている鉱物顔料、樹脂、和紙等の材料推定を可能ならしめ、従来の画像データのみをもとにした修復やレプリカの製作で推定の域を出なかった部分に、確実な情報を提供することとなります。大乗寺の障壁画もスキャナー開発のお手伝いができるかもしれません。


切なる祈り
オリジナルの作品に如何に近づけるかを検討しつつ最上のものを目指すのが本来のレプリカ製作の目的です。襖絵を背中にして外の景色を眺め、自分が絵画空間と実空間が融合した新たな空間に存在することを感じながら、お茶を頂く贅沢を、レプリカででも出来た時点でデジタル再製画の製作意義が評価されるものと思っています。残念ながら、大乗寺の場合、スタート時点ではそうあったのが、途中から監修者(洋画家)が入るようになり、様子が違ってきました。PHOTSHOPを使った「電子塗り絵」にならないことをただただ祈るだけです。[おわり]
【大乗寺のホームページ】
http://www.daijyoji.or.jp
http://museum.daijyoji.or.jp